先日、福岡出張の際に、福岡ドームでプロ野球オープン戦を観戦しました。
長いお付き合いのある野球観戦の好きな社長とご一緒したのですが、そこで不思議なオジサンに出会いました。
試合を見ながらの楽しみは、あのシチュエーションでビールやチューハイなどを飲むことで、指定された席に座るやいなや早速、売り子の方に声をかけて、「ビールを2杯!」と注文しました。
さて、しばらく(ビールが減り始めた頃)して、同席の社長があたりをキョロキョロしはじめ、売り子の方に手を挙げ、声をかけました。
そこへやって来たのは、ビールのタンクを背負ったメガネをかけたオジサン(失礼!)でした。階段を上り下りして歩き回る体力のいる仕事である売り子の方のほとんどは、大学生・専門学校生と思える若い男女で、私があたりを見渡す限り、40代を過ぎたオジサンは、この方お一人でした。そして、社長は、ビールを2杯頼みました。
すごい体力だなーとか、どれくらい収入あるのかなーと、思って最初の接点は終わりました。しかし、なんだかとても気になるので、社長に聞いてみると、「いつも彼に頼むんだよ。彼の動きを見てごらん」と言われました。
野球を見ながら、彼の足取りに目をやると、不思議な光景を見ました。彼は、売り子にありがちな、コップを高く持ち上げて「ビールいかがですかー」などとは一切声をかけず、淡々と歩いて目的のお客様の所に向かい、そこでビールをついでいました。顔見知りの客の所だけを巡回しそこで販売する、時折声をかけられると、一見さんにも売るという売り方のようでした。もちろん、お客も毎日球場に来るわけではありませんから、おそらく数多くの彼の顧客がおり、その中でその日来場した方を見つけて売っているのでしょう。
さらに、30分くらいして、今度は声もかけていないのに彼はやってきて、「どうしましょう?」と我々に聞きます。社長は、ビールの売り子である彼に「焼酎のお湯割りを一つ」と言います。驚いて聞くと、「スタンドではなく、球場の内部の売店で買って持ってきます」というのです。どのような販売インセンティブがあるかわかりませんが、自分の顧客のために労をいとわないというスタンスのようでした。
一切売り込むこと(声をかける)をしなくても、いつものお客の所に顔を出すと売れるというこのスタイルは、ビジネスの現場でも参考にしたいものです。
きくと、地元紙(西日本新聞社)にも取り上げられたこともある、有名な方のようでした。東京ドームの売り子の方の中には、ルックスと気立てのよさからアイドルになった女性もいるようですが、こちら福岡ドームでは、40歳代後半のオジサンが、有名人でした。
2014.3.24